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Special Interview

北野博士に「PINO」にまつわること、博士ご自身についてなどをインタビューしました。
全3回に渡るインタビューの第1回目は、主にPINOについてをお伺いします。
(第2回は
こちら 第3回はこちら

北野宏明氏
人工知能(AI)研究における世界的な第一人者。現在はソニーコンピュータサイエンス研究所のシニアリサーチャーを務めながら、JST北野共生システムプロジェクトの総括責任者も務める。1993年に国際知能学会より“コンピュータ界のノーベル賞”と言われるコンピューターズ&ソート賞を日本人として初受賞。

プロフィール、著書はこちら

北野共生プロジェクト」とは、もともとどういう研究をしているのですか?
共生系知能を研究するプロジェクトです。
このプロジェクトは、「共生系知能」、中でも歩行の学習や認識のためのプロジェクトをしています。


■PINOの設計思想について教えていただけますか?
「ロボットの基盤研究・安価・デザイン重視」をキーワードに作りました。
ひとつは、ロボット制作のプラットフォーム、つまり基盤技術を作ることを目的にしています。
「PINO」の研究成果は、いろいろな人に還元されることが前提で、ロボット制作の「Linux」にしようと思っています。ご存知の通り、「Linux」は情報公開前提のOSですよね? 実際、「PINO」も「Linux」を使ってるし(笑)「PINO」も、公開前提の技術なんです。この記事が載る頃には、全ての「PINO」に関する設計情報やソースコードも公開になっていると思いますよ。

次に、安く誰でもできることですね。
例えばホンダの「ASIMO」って、作るのにすごくお金がかかるでしょ?(笑)
たとえば普通の人が秋葉原や東急ハンズのようなところで部品を買ってきて、普通につくれるハンドメイドのものをつくりたかったんです。その代り、メカの精度やトルクはあまり望めませんけれど。
一部のギアだけは通常のプラスチックだと、どうしてもダメで、そこだけ特殊なギアを使ったりしてるんだけど、でもそういう部品のお買い求めはZMPでできるから(笑)。

最後に、デザインですね。
普通ロボットのデザインは、ある程度組みあがってからデザイナーさんに入ってもらって決めてもらうことが多いんですが、僕はデザインっていうものは、すごく重要な要素の一つだと思うし、もっと大事にしなければいけないことだと常々思っていたんです。
そこで、今回は最初から(デザイナーの)松井君に入ってもらいました。



■なぜ安くつくろうとお考えになったのですか?
ロボットも、「使われてナンボ」だと思うんです。
僕は、工学的研究は世の中に還元されてはじめて成果が出るものだと思っています。
そこでは「安い」というのがすごく重要なんです。コストが高ければ、研究どまりでしょ? 
商品にするためには、安くしなきゃ。工学的研究は、世の中に商品として還元されて初めて研究の意味があると思うんですよね。そのためには、「PINO」は安く作れなくてはいけないと思ったんです。いろんな人に研究してもらうためにも、安いのは大切ですよね。


■いちばん最初に、「PINO」のかわいらしいデザインを見たときはどのように感じましたか?
鼻の形が、非常に格好いいなと思いました。
でも、最初は今とは全然違うデザインだったんです。最初にデザインの松井君がもってきたとき、実はデジカメに手足がついたような一つ目小僧のようなイメージだったんですよ。
今のようにバイザーもつけていなくて。バイザーについては非常に論議しましたね。「バイザーつけたら?」というのは、僕の意見だったんですが。まぁ、「SIG」もバイザーだったんでね。松井君としては、一生懸命そのイメージをぬぐいたかったみたいなんだけど(笑)。

それから何回も何回も彼はいろんな提示をしてくれて、最終的にピノキオのイメージを持ってきた。彼がすごいと思うのは、デザインで「ロボットの存在」というものを呈示してくれたところです。彼はそのとき「宇宙船に乗ったピノキオのイメージ」を考えていたんですよ。その後も、「PINO」の制作コンセプトとピノキオに繋げる世界観をきっちり作ってくれた。あの辺りは、松井君本当にすごい。見事だと思いました。

■開発にはどのくらいの期間があったのですか?
12月から始めて、4月18日に組み上げました(笑)。
当初12月からやって、夏くらいかな・・・と思っていたら、途中「ヴェネチア・ヴィエンナーレ」に出展することになり、それが6月12日って聞いて。
船の積荷とかを考えると、5月の連休明けには出さなきゃいけない、と考えてたら、それがまた早まって4月の18日になって!なんで4月18日と覚えているかというと、18日は「TIME」の原稿の入稿の日だったんです(笑)。

実はその年の2月からずっと「TIME」の密着取材があって、「PINO」の研究を見開きのページに使用するのが決まっていたから。だから、4月18日の入稿までになんとか作り上げなきゃって、ずっとプレッシャーがありました。スケジュール的には、かなりきつかったけど「いける!」と判断して、4月18日に出来ると言っていたんですが、途中結構焦りました。外部の加工業者に頼んでいる部品の到着が遅れたらそれだけでアウトだし。4月の頭は、(部品のやり直しでの)後戻り工程を考えると不安になったりしてね。

最後のほうは1時間単位のスケジュールで動いてました。まあ突貫工事だったんだけど、悲壮感のようなものは全くなかったですね。

その後8月に、メルボルンのロボカップに出展したんだけど、この辺までは、何歩か歩くのが精一杯。その後のMOMA出展では動かさなくてOKで(笑)。歩行学習は、組み上げてから徐々にレベルアップしましたね。


■どのくらいの方が、それぞれどのような開発に携わったのでしょうか?
基本的には3人です。
僕、デザインの松井君、プログラムの山崎君の3人でした。
それと途中から、3DやCADを担当してくれた五十嵐君、星野君、歩行担当の遠藤君、最終的にはその6人で行ないました。


■開発中、セククションごとに譲れないものとかディベートがあったと思うのですが、そんなとき大切にしていたことって、なんでしょう?
技術というのは人間のための技術でないといけない。ということですね。
たとえばむきだしのメカというのは、そこに置かれていてもさみしいですよね。なので、「SIG」(「シグ」。北野共生プロジェクトでPINOの前に開発されていたロボット。首のみ稼動する。)のときは人工の皮膚をシリコンで作って人間の顔にしようか、という案もあったんです。でも結局やめた。つまりロボットはロボットですから、人間の役に立って人間の生活が豊かになればいい。そこに人工の皮膚というのは違うと思ったんです。

技術というものは実社会で何らかの価値をもって、使われてなんぼだと思うんですよ。「PINO」はおもちゃになってキャラクターになったけど、それは本当にすごく価値のあるものだと思う。「あげます」、っていうのと「買います」っていうのは明確な境目だよね。実際、ZMPさんという会社は「PINO」でご飯を食べているわけだしねぇ(笑)。 そういうところを大切にしました。



■「SIG」と「PINO」の違いは?
自由度が全然違いますね。
人間みたいに、自由に身体を動かすのは、ロボットにとってはとても難しいことです。
人間の関節にあたる部分、モーターを使って一つの動きをさせることを、自由度という単位で表すんですが、例えば「SIG」は、首しか動かなくて「自由度4」。「PINO」は歩行までしますから「自由度26」。この4と26の差は、すごい大きい。


宇多田ヒカルさんの「CanYouKeep A Secret?」のPVにもPINOは出演しましたよね。

そうですね。宇多田さんは「PINO」と会った瞬間に「かわいい!」といってくれて。

こちらの「PINO」に対する意図にも、ちゃんと理解を示してくれました。
あのときの「PINO」は対比のために元の70cmより大きくて、120cmになっているんだけど、そうしたことで妙にリアリティがあったんですよね。

あと「PINO」の登場シーンは全部Take1発でOKだったんです。相性がよかったんですね、きっと(笑)。


■PINOの「70cm」というサイズには、理由があるのですか? 
あります。意図的です(笑)。
「PINO」が70cmというのは、サブモーターをつけることができて、コスト、納期、イメージなんかを考えて…それで大体あのくらいのサイズになっているから、モーターのサイズや構造から、どのくらいの歩き方、どのくらいの不安定というのは予想できているんです。

ですから技術的なイメージからも動作が「かわいい」というのは実は意図的にやっています。

ちょっと普通のロボット研究の逆をやっているなと思っていますけどね(笑)。


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