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Special Interview

第2回は引き続き松井龍哉さんのインタビューです。



■ロボットをデザインするというと
松井さん

僕にとって「ロボットをデザインする」というと、一般的には生活の、いわゆる工業デザイン。オートバイとか冷蔵庫とかステレオとか、パソコンのデザインもそれに入るんですけど、そういったデザインの手法でロボットもやるのかなって思うんですけど。

でも、僕はその前に、いくつかロボットのデザインをやってきて、その中で20世紀の、いわゆる近代デザインの手法というのが、ことごとく使えないってのがわかってきたんです。

というのは、ロボットって止まって鑑賞されるのもではないでしょう?ロボットがロボットたる由縁っていうのは、自立っていうのも、一つのキーワードなんです。自立しながら、環境変化にあわせて動き続ける人工物っていうものが今までなかったんですよね。

ステレオとかああいうものは、置く場所とか、環境というのは決まってきているし、形として完結していればやっぱりそれは美しいわけです。なんだけど、ロボットは完成しているというよりは、何かインタラクションして動いている、というところ。そういったことまで含める。

それから、ロボット自身には感情というものはないんだけど、ある種のキャラクター性みたいなものを持たせる、ということでいくと、そのデザインの手法も工業デザイン的な発想方法では、これはデザインまで開花していかないんですよね。

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■通常のやり方を全部やめて

そこで、通常はコンピューターを使って、平面図、立面図、単面図っていうのを描くんです。それで、そこから基本設計図があって、実設計図、というようなやり方で通常は設計していくんですけど、それの手法を全部やめて、3Dのゲームのキャラクターデザインをやっている人に僕のスケッチを渡したんです。

それで、どういう風になってくるのかっていうのを見てみたんです。それから僕のやってきた近代デザインというものとマッチしながら、3Dデザインといわゆるプロダクトデザインを併合させていきながら、デザインの方向を作っていったんですね。
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で、それは全部データで作りこんでいって、そのデータをネットワークで送って、データを機械に流してそれが立体に出てくる、っていう方法があって、それを使ってやったんですけど、それは非常にロボットのデザインをする方法としては正しかったかなって思うんですよね。

工業デザインだけだとどうしても「PINOをいかに見せるか」って話になっちゃうんですけど、さっきも言ったようにピノキオの持っているイメージ、そういったキャラクター性まで含めたものを入れていくには、ある種の3Dデザイン的な発想っていうのが必要かなって思います。

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■オーケストラの指揮者

それでも、いろんな物が足りなくって。今は彫刻をやる人を入れたり、たとえば胸の部分に関しては、日本の有名な職人さんで洋服のドレスを作ったりするときの型をつくる、そういう人にアドバイスに入ってもらったりとか、顔の部分はやっぱり、顔の彫刻をやる人だとか、やっぱりいろんな人が入ってこないとこれはできないなって思ってやってます。

結局でもデザイナー自身が、コンセプトワークの所とイメージ図ってのをがっちりやっておかないと、いろんな人を集めてもただバラバラになってっちゃうから。それは本当に「オーケストラの指揮者」ってよくいいいますけど。 松井さん
なんていうか、ディレクターっていう人はみんなそうだと思いますけど、指揮者の人って完成したイメージっていうのを誰より一番強く持っていて、それでそれぞれの人の能力っていうのかな、ピアノとかバイオリンとかいう能力をうまく出して、最終的に音として人に聞かせるわけですよね。

そういったように、だれよりも完成したイメージっていうのを持っていて、デザインをして、それで様々な人にアドバイスを頂きながら形にしていく、っていうような、そういう作業をしています。工業デザイン的な発想だけでは、これはちょっと出来なくて、すごくいろんな教養が必要になってくるし、こだわりの落としどころっていうのをね、自分の中の哲学として持っていないと、非常に流されていっちゃうと思います。

そういうようなコンセプトワークというのからはじめて、デザインをして、それでプロダクションを実際にしていく時も、やっぱり色んな人を集めるんだけど、イニシアティブをとってやってゆくと。

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―すごく素朴な疑問なんですけど、PINOを作られた時から、市販化ということを考えていたんですか?

これは全く考えてないですね。(笑)
まあ予想外でした。それに僕の中では、あの時点でPINOってのは70cmで完成してますので。それに、ロボット…本物のPINOの場合はね、やっぱりあのサイズと…あの持っている存在感というのがやっぱりPINOと思っているので、縮小したり大きくしたりというのはですね…本当は、非常に…最初は抵抗があって(笑)
PINOのTOYで遊ぶ松井さん
―そうだったんですか(

だと思ったんですよね、最初は。でも、ある時期から、それはデザイナーとしてはすごく視野が狭いかな、と気がついて。やはりPINOというのは、北野プロジェクトだけのものではなくて、やっぱり社会に出ていくものなのかなと、いうふうに頭を切り替えていったというか。

やっぱり僕らの研究材料としてだけではなく、本当に、社会的なものになって、一つのことだなあと思ったんです。ああいう商品にしても、実際にまあ、TOYではあるんだけど、ああいう国立の研究所から出てきたものがひとつの産業として出ることは、これは世の中の流れとしてはすごくいい傾向なんではないかなと、思ったんで。それは本当にひとつのPINOの社会貢献なんじゃないかなあ・・・。

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PINOと宇多田さん ―宇多田ヒカルさんのPVもそうですよね。

それはね、今年一番最初にかかってきた電話なんですよ。今年最初ってことで、今世紀最初ってことで(笑)「何か、そういう話になったから!」って話になって。僕は撮影にずっと付き合っていたんですよ。

「あるちょっとした未来で、人とロボットが一緒に生活をしている」というのを、サラリとやりたいという話だったし、我々のコンセプトも非常に理解してくれてPINOを選んでくれたので、僕としてはこれはすごくいい話だなと思いました。
でも僕はあまり、そういう世界をよく知らなくて、本人もよく知らなかった。もちろん歌なんて聴いたことないので、それからあわててCDを買いに行ったんですよ。そんなに影響力ある人と、思わなかったんです(笑)

でも、そんな中、すごくうまく僕のイメージしている「ロボットと人が普通に生活しているイメージ」が生まれていたんで。ただ、あれも…その、サイズがね、また変わったんですよ。(70cmから)120cmにしたんですけどね、少し大きくなったPINOにしてやってますけど。それでも結構大変でしたね。
■何ミリか何ミリかっていう話

PINOって頭に2つ型があって、そこの溝のところが本物のPINOは大体0.3mmくらいなんですけど、実際のPINOをそのまんま拡大すると、この溝がすごく大きくなって、そこに光が、影が入りすぎちゃうから、そこをあえて0.2mmに縮めるとかね。

そういう細かいディティールまで色々造形する人に細かくいって、やりましたんで、ほんとに何ミリか何ミリかっていう話を延々とやってつくっていったんで、そんなに違和感なく、あの中で動いてるんで、まぁ、よかったかなと。
松井さん
■パーティに宇多田さんが来てくれて

宇多田さんが非常にPINOの事を気に入ってくれて、すごく和気あいあいとやって頂いて、それがすごくよかった。ちょうど僕たちがニューヨーク近代美術館でPINOを展示していたんで、そのことを宇多田さんに言ったら、オープニングパーティをニューヨークでやっていたときに、宇多田さんがきてくれて、PINOに再会とかしてくれて、すごく彼女も気に入ってくれたんで。

ニューヨーク近代美術館であるようなパーティ、オープニングパーティに来る人って、ある種の感性をもった人がくるわけですので、でそういう人たちが集まる場所にきて、PINOがそこでも人気者だったから、そういう感性をもった人に、非常に愛されるロボットなのかな、なんて、そこでは思いました。

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―理想のロボット像というのはありますか?

僕は、ガンダムみたいなもの見て見たいんですよ。それこそ鉄腕アトムから始まって、色んなのがあると思うんですけど、どれもこれもロボットは好きですから。でも、そんなに人間なんでも出来るわけでもないですから。

■目標はプリマドンナと一緒に踊ることが出来るロボット

僕はロボットに関していえば目標一つしかなくて、それは北野さんのロボカップみたいなものですけど。僕の場合はバレーリーナロボット。と言っても、ロボットがバレエをやっているのを観るならディズニーランドに行くのと変わらないんですよ。プリマドンナ、パリのオペラ座でやるプリマドンナと一緒に踊ることが出来るロボット、これが僕の目標です。
イメージ っていうのはね、さっきから何回も話しているんですけど、ロボットって動くことが定常なわけですよ。動きのモーションデザインというのが、すごくその外観、存在感に影響してくるから、その動きが究極に美しい動きのロボットをデザインすれば、もちろんそれで美しいって思うだけではぜんぜん面白くなくって、それは人と物があまり関係性がないわけですよ。

ですから、人が最も美しく動くバレリーナ、それもそこは最高の舞台なわけですよ、オペラ座というのは。そこでプリマドンナが踊って、ロボットも一緒に踊ることによって、ようするにモダンバレエっていうのはですね、話が長くなるんだけど…(笑)

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―ぜひ聞かせてください。

モダンバレエってのはですね、より強く、高く、速く、というですね、これは産業革命のマシニズムの定義なんですけど、削ぎ落としてゆくという計算をして、無駄の無さの中の簡素さの美しさを求めるようなものがあるんです。

バレエ見てるとそうじゃないですか、言ってみれば非人間的行為を、我々は逆に美しいと感じる訳です。一方、マシニズムの象徴としてのロボット、これが、人間の動きをする。
この本来の存在として逆転したものが、同じ舞台で共演するということは、僕は人と物との関係がすごくまた曖昧になって、おもしろい空間ができるんじゃないかって思ってるんですね。

我々が人工物とこれから21世紀どういう風に関わっていくかっていうときに、人工物にもその愛情をもてないと、これはいけないと思うんですね。
■人工物との共存

っていうのはなぜかっていうと、この部屋の環境を見てみても、人間以外はほとんどがですね、人工物になってくる環境なんですよ、今。

それは都市生活がそういうものなんだけど、それを否定することは、もう僕らは出来ないわけですよね。昔々にルソ−が「自然に帰れ」っていったんだけど、そういうことをやっぱり、もうやれない時代で。
じゃあいかに人工物と我々が共生していかなければいけないか考えたときに、「美しさ」っていうのは一つの解決法にはなるわけですね。

ですからそういう美しいと思う人工物と我々がどういう風に関わって行くかということを舞台をやることによって証明できればいいかななんて風に僕は思いますけれども。

で、そのバレエをやるロボットなんです。自分が生涯をかけてもいい目標ってのは、はっきりいって、そんなにあるわけがないんですよ。ですから、ロボットに対しては、それが僕やれればいいかななんていう風に思ってますけどね。ま、ガンダムとか色々ね、操縦とかして見たいですけどね、それは、どっか誰かやるかも知れないから(笑)
松井さん
―ガンダムはきっと誰かやりそうですね(笑)。

うん(笑)
ただ、これは僕が外国で公演をやると99%聞かれるんですが、「ロボットってのはいつアーミー(軍隊)に行くのか?」っていう質問が非常に多いんですね。非常に。外国に行くと。だけどPINOなんて兵隊にやったって足手まといにしかならないんですよ。はっきりいって(笑)

僕の作ってるのは、他のロボットとかもそうですけど、兵隊にだけはならないロボットをつくろうかな、なんてふうに思ってますよね。

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